紙本著色病草紙

基本情報

  • 台帳ID: 201
  • 管理対象ID: 38
  • 種別: 絵画
  • : 日本
  • 時代: 鎌倉時代
  • 指定年月日: 1952年03月29日
  • 都道府県: 京都府
  • 所在地: 京都国立博物館 京都府京都市東山区茶屋町527
  • 所有者名: 独立行政法人国立文化財機構

出典: 国指定文化財等データベースより一部抜粋

概要

『病草紙(やまいのそうし)』は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて制作された、当時の人々に現れたさまざまな奇病や身体的特徴をリアルかつ生々しく描いた絵巻物です。本作「紙本著色病草紙」は、詞書(ことばがき)と共に特定の病状や治療の様子が描かれており、当時の風俗や医学的状況を知る上でも極めて貴重な資料となっています。現在は京都国立博物館に所蔵されています。

歴史的背景

本作が制作された平安末期から鎌倉初期は、仏教の末法思想や「六道(りくどう)」の観念が広く浸透していた時代でした。この絵巻は、人間が避けられない苦しみの一つである「病」をテーマとしており、同時に制作された『地獄草紙』や『餓鬼草紙』などと共に、人間のありのままの姿や苦難を描く「六道絵」の系譜に属すると考えられています。当時の貴族や僧侶の間で、自省や教訓のために鑑賞された背景があります。

特徴と魅力

『病草紙』の最大の特徴は、病に苦しむ人々の姿を冷徹なまでの観察眼で描き出した、卓越した写実性にあります。

  • 克明な医学的描写: 「不眠の女」「鼻の長い男」「歯の揺れる男」など、現代の医学的見地からも特定可能な病状が、驚くほど正確に描写されています。
  • 豊かな人間模様の表現: 単に病を描くだけでなく、それを取り巻く家族や周囲の人々の反応、生活環境が生き生きと描かれており、当時の社会風俗を伝える歴史資料としての価値も非常に高いです。
  • 繊細な色彩と筆致: 紙本著色(しほんちょしょく)という技法を用い、薄墨の輪郭線と淡い色彩によって、病者の苦痛や倦怠感、あるいは滑稽さまでもが繊細に表現されています。
  • 国宝としての価値: 醜いものや忌むべきものとされる「病」を主題としながら、それを芸術の域にまで高めた独創性と、中世日本における絵画表現の多様性を示す傑作として高く評価されています。